ペンの光のかな部・自由作品部、ペン展、小作品展などに使う、雅印(書道用の名前の印鑑)のお話をしたいと思います。

毛筆の雅印や、他の流派のペン字の雅印とは、おそらくかなり異なることを書くかと思いますが、あくまでも私が師匠から教わってきた、日ペンで使う雅印のお話をします。
(日ペンの先生でも異なる見解の先生はいらっしゃることと思いますので、御師匠のいらっしゃる方はそちらの見解を優先してください)
雅印雅印とよく聞くけどよくわからない!という方は、とりあえず、日ペンに電話かメールをして、「朱文(しゅぶん)、2分(にぶ)、1顆(いっか)、新鋭作家の先生の雅印をください」とお伝えください。

その際に、ご自身の本名の1文字目、たとえば花子さんなら「花」を彫ってほしいと併せてお伝えください。

これで日ペンでは当分やっていけます。

ペン展用に使いたい方は、日ペンへ「ペン展で使用します」と伝えて、遅くても2月中旬(できれば1月中)には注文完了してください。
(橘香支部所属の方は、私から割引価格で注文できますのでご相談ください)

以下それぞれの用語の説明をいたします。
(注文できたからもういいやという方は、以下、「印泥」の話の前まで読み飛ばしてくださいませ)

  • 朱文か白文か

雅印は、文字が赤くなる(文字の周りを彫る)タイプを朱文、文字が白くなる(文字を彫る)タイプを白文(はくぶん)と言います。

通常の書道では、姓名印(本名の印)は白文、雅号の印は朱文で彫ります。
よほど画数が多い場合を除けば、白文は朱文よりも赤い部分の面積が大きくなります。
ペン字の場合、つけペンやボールペン等、普通の毛筆と比べるとだいぶ繊細な線で作品を書きます。
繊細なペン字の作品に白文を押すと、赤い部分の面積が広すぎて雅印の印象が強くなりすぎます。
そのため、日ペンの繊細なペン字作品には朱文印が良いとされています(諸説あります)。

  • サイズ

雅印のサイズは、通常、1分(ぶ)、2分と数えます。1分=約3mmです。
前述のように、ペン字は繊細な作品になるので、あまり大きすぎる雅印では印象が強すぎます。
そのため、とりあえず1個購入するのであれば、2分=6mmが適切でしょう。
雅印の適切なサイズは大体、作品の字の大きさや線の太さによって決まるので、自運創作部や規定1部などの大きな作品を書く場合でも、同じ2分印で事足ります。

また、筆ペンの作品など太めの線や大き目の字粒の作品を書く場合は、2.5分など少し大きめの印を使うこともあります(最初のうちは筆ペン作品でも2分で十分です)。

  • 個数

雅印には、1個だけ単独で使うものと、2個セットで使うものがあります。
前者は1顆(か)、後者は2顆と言います。
初心者さんがとりあえず1つ作るというのであれば、まずは1顆で十分です。
私も20代の頃に作っていただいた1顆印を今でも使っています。
のちのち慣れてきて作品に応じて2顆印を作りたくなることもあるかと思います。
その場合は、本名の1文字目(花子さんなら「花」)の朱文と、雅号の1文字目(芳翠さんなら「芳」)の白文で作ります。

余談ですが、このことがあるので、うちの師匠は雅号を付ける際に、本名の1文字目と雅号の1文字目は異なる字になるように命名していらっしゃいました。

  • 篆刻の先生の話

日ペンでお願いしている先生方は、私が言うことではありませんが、とても優秀でいらっしゃいます。
先生の経験などによって雅印の金額も変わってきますが、特別なこだわりがなければ新鋭作家の先生で十分です。

また、特に指名や細かい指定をしなくても、良い印を彫ってくださいます。
日ペン以外でも良い印を彫ってくださる篆刻の先生は大勢いらっしゃるのですが、有名な先生や実力のある先生であっても、よくわからず頼んでしまうと繊細なペン字には不似合いの印が出来てきてしまうことがあります。

よくわからない場合は日ペンに頼むのが無難です。

  • 彫ってもらう文字

1顆の場合、本名の1文字目を彫ってもらいます(花子さんなら「花」)。
これは、雅号を既に持っている方でも同様です。
よく、雅号をつけたから雅印も作り直しになってしまうのかと質問されますが、雅号をお持ちの方でも雅印は本名で押します。

私も、「芳翠かく」と書いた後に押す1顆印は、最初に作った本名の1文字目の雅印です。

  • 印泥

読み飛ばしてくださった方はここからまたお読みください。
雅印を押すときは、一般的に銀行印などで使う朱肉ではなく、印泥(いんでい)というものを使います。
ただ、この印泥、やや扱いが面倒なのと、高価なのと、押すのにコツが必要なのとで、誰でも気軽に使い始められるものではありません。

そこで、私の周りで皆さんよく使っているのが日光印(にっこうじるし)の練り朱肉です。
こちらは練ったりせずにそのまま使うことが出来ます。

本物の高価な印泥と比べると、耐久性や作品の保存性の面でもしかすると劣ることがあるのかもしれませんが、少なくとも10年程度でどうかなってしまうことはなさそうです。
Amazonなどでも扱いがありますので、「日光印 印泥 40号」で検索してみてください。

黄口、赤口、濃赤の3種類ありますが、特にこだわりがなければ赤口1つで足りるでしょう。

一般に、かなでは黄みの強いものを、漢字では赤みの強いものを、漢字かな交じりではその中間の色のものを使うとよいとされています。

また、サイズは色々出ていますが、一番小さな40号で十分です。
他のサイズとは異なり、40号だけはネジ式の蓋になっているため、持ち運びにも便利です。

本物の印泥を買ってしまったけどどうしたらいいかわからないという方は、そのまま放置せずに、早めに詳しい方にご相談ください。
(放置していて品質が劣化してしまった印泥をたくさん見ております)
また、本物の印泥を買う場合、お店によって保管状況が異なるので、出来るだけきちんとしたお店で購入したいです。
また、大きな高価な印泥を買ってしまっても、ペン字だけで使用する場合には一生かかっても使い切れないということもあります。
こちらも知識のある方に相談するか、日ペンさんに相談して購入なさると良いでしょう。

  • その他

よく聞かれるのが、印辱台(いんじょくだい)と印矩(いんく)は必要かという質問です。
ペン字の雅印については、どちらもなくて良いでしょう。
印辱台というのは、銀行印等でいうところの捺印マットのことです。
様々見解はありますが、ペン字の雅印は非常に繊細なので、硬いところで押した方が鮮明に押せるようです。

私は厚めのアクリル板の上で押しています。
また、毛筆用の大きな雅印の場合、位置決めに印矩というT型かL型の道具を使います。
ペン字の雅印はかなり小さいので、印矩は使わずに押した方が良いように思います。

以上、日ペンのペン字用の雅印のお話でした。
そもそも雅印なんて必要?という声も聞こえてきますが、必須ではないものの作品の質を高めるためにはあった方が良いでしょう。

また、押印位置や押印の仕方等、押印にも練習や慣れが必要です。 是非初心者さんのうちから1つ雅印をお買い求めになって使ってみてください。